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「結局、サッカーが楽しいから続けてる。」創設から5年、山口賢人が仕事とサッカーの中で見つけたもの

2026 9/01
インタビュー
2026年9月1日
山口 賢人選手インタビュー
目次

NAGAREYAMA F.C. PLAYER’S STORY|山口 賢人選手

「結局、自分はサッカーが楽しいから続けてるんで。」

NAGAREYAMA F.C.創設初年度からプレーを続ける山口賢人選手。
大学卒業を前に怪我をし、思い描いていた進路へ進むことができず、社会人として働きながらサッカーを続ける道を選びました。
当時は就職活動もほとんどしておらず、「仕事しながらサッカーできるのかな」と不安を抱えていたといいます。

それから5年。
早朝からパンを配送する仕事を経験し、転職を経て、現在はビルメンテナンスに関わる仕事をしながらサッカーを続けています。

仕事への考え方も、サッカーをする理由も、入団した頃とは少しずつ変わってきました。
地域の人たちや子どもたちと出会い、応援してくれる人が増えたことで、今では「その人たちと勝つ喜びを分かち合いたい」と話します。

創設からクラブとともに歩んできた山口選手に、これまでの5年間を振り返ってもらいました。

「仕事しながら、サッカーできんのかな」

—— NAGAREYAMA F.C.へ入団した経緯から教えてください。

山口:
「大学4年の最後に、他のチームへ練習参加に行こうと思っていたんですけど、最後のインカレの時期に怪我しちゃって。
そのときも肉離れだったんです。
それで、他のチームを探すのもちょっと厳しいなと思って。
なるべく近いところでないかなって探していました。
大学の同期が流山に行くっていうのも分かっていたので、それで話を聞いてみたのがきっかけですね。」
当時の山口選手は、プロを目指してサッカー中心の生活を送っていました。
就職活動にもほとんど取り組んでいませんでした。

山口:
「最低でもJFLには行きたいなと思っていたんですけど、それも駄目だったので。
いざ社会人になるってなったときに、『仕事しながらサッカーできんのかな?』みたいな不安はありましたね。」

—— 仕事について、やりたいことは決まっていましたか?

山口:
「いや、本当にサッカーのことしか考えてなかったんで。
仕事について『こういうことがやりたい』って聞かれても、自分の中で『これやりたいな』みたいなのが出てこなかったですね。」

それでも、サッカーは続けたい。
仕事も必要になる。
その両方を考えられる環境として、NAGAREYAMA F.C.を選びました。

「Jリーグ参入」という目標があったから、もう一度上を目指せた

入団の決め手は、板橋選手や板倉選手がいたことを挙げながらも、それだけではなかったようです。
もう一つ、山口選手の心を動かしたものがありました。

山口:
「入団を決めた理由でもう一個あって。
ちゃんと『Jリーグに参入する』っていう明確な目標があったんですよね。
そういうクラブって、なかなかないと思うんです。
一からスタートして、もう一度上を目指していく。
そこも大きかったです。」

大学まで本気でサッカーに取り組んできたからこそ、社会人になって競技レベルを落とすのではなく、もう一度上を目指したいという気持ちがありました。

山口:
「他のチームに行っていたら、もしかしたらそこまで本気になれなかったのかなって思います。
一から始まるチームで上を目指すというところは、すごく魅力だったのかなと思います。」

NAGAREYAMA F.C.は、山口選手にとって「サッカーを続けられる場所」であると同時に、「もう一度、本気で上を目指せる場所」でもありました。

朝6時から仕事。そのままサッカーを続けた最初の2年間

入団後、最初に働いたのはパートナー企業が運営するパン屋さんでした。

山口:
「最初はパン屋で配送をやっていました。
朝6時からですね。
最初に少し生地をこねたりして、焼き上がったパンを車で店舗へ届けるという仕事でした。」

約2年間、その仕事を続けた山口選手。
ただ、早朝から働き、その後にサッカーの練習をする生活は、徐々に身体への負担も大きくなっていきました。

山口:
「車を運転している時間が長かったんですけど、だんだん朝早いのがきつくなってきて。
『このまま続けるの、ちょっと危ないな』って思ったんです。
事故りそうだなって。」

それでも、サッカーを続けることへの理解は職場にありました。

山口:
「パートナー企業だったので、職場の人たちはちゃんと理解してくれていました。
働きやすさはすごくありましたね。
今でも前の会社の人と会ったら、サッカーの話をしたりしますし、つながりがある人もいます。」

仕事を変えても、人とのつながりは残っている。
社会人サッカーを続ける中で生まれた、山口選手にとって大切な財産の一つです。

「今後のために、違う仕事も経験した方がいい」

パンの配送を辞めた後、山口選手は少し期間を空けて、新しい仕事を探しました。
そこで選んだのが、現在働いているビルメンテナンス(東武ビルマネジメント株式会社)の仕事です。

山口:
「前の仕事はデスクワークとかがほとんどなかったので。
そういう仕事もやっておいた方が、今後自分の中で成長できるんじゃないかなと思いました。」

現在は、管理している建物や施設について、顧客との窓口になる仕事を担当。
設備や清掃など、それぞれの担当部署と調整しながら仕事を進めます。
清掃業務などの案件では、見積もりを作成し、翌年度に向けた予算の調整にも携わっています。

—— 実際に働いてみて、ご自身にとって、以前との違いを感じますか?

山口:
「全然違いますね。
今はお客さんとの窓口になるので、いろんな部署の人とやり取りすることもあります。
今までやってこなかったことなので、そういう意味では経験になっています。」

大学卒業時には、「どんな仕事をしたいか分からなかった」と話していた山口選手。
サッカーを続けながら慣れない仕事にもチャレンジして、自分の将来についても少しずつ考えるようになりました。

「試合に勝ちたい」だけだった気持ちが変わった

創設初年度からNAGAREYAMA F.C.に所属してきた山口選手。
5年間の中で、大きく変化したことがあります。
それは、「なぜ試合に勝ちたいのか」という気持ちです。

事前に取ったアンケートの「地域活動を通して、自分自身が成長したと感じること」という質問には「応援してくれる方々のために勝ちたいという思い」と回答しています。

—— NAGAREYAMA F.C.へ来る前と後では、試合での感じ方に変化があったのでしょうか?

山口:
「単純に多分、『試合に勝ちたい』だけだったと思いますよ。」

もちろん、今も勝ちたい気持ちは変わりません。
しかし、その理由が増えました。

山口:
「試合に勝ちたいっていうのはもちろんですけど、応援してくれる人がやっぱり多いので。
その人たちと、勝つ喜びを分かち合いたいなって思うようになりました。」

地域活動やイベントを通じて、サポーターとの距離が少しずつ近くなりました。
以前なら「応援してくれている人」と一括りにしていた人たちにも、それぞれの生活があります。
その人たちと実際に関わるようになったからこそ、サッカーに対する気持ちも変わっていきました。

子どもたちと触れ合うことで知った、クラブの役割

NAGAREYAMA F.C.では、創設初年度から清掃活動などの地域活動を続けています。
山口選手も、さまざまなイベントに参加してきました。

山口:
「クリーン活動は初年度からやっていますね。
自分は子どもたちと関わるイベントが印象に残っています。
ハロウィンのちょっとしたお祭りだったり、小学校へ行ったり。
子どもたちと一緒に触れ合える環境があります。」

—— 子どもは好きなんですか?

山口:
「好きですね、結構。
一緒にサッカーやったりするのも楽しいです。
子どもって純粋じゃないですか。
いいなあって思いますね(笑)。」

地域の子どもたちにとっては「憧れのサッカー選手」。
そんな自分たちの活動を楽しみにしてくれる人がいる。
応援してくれる人と直接触れ合える。
そうした経験を積み重ねる中で、山口選手の中にも「自分たちは地域の中にいる」という感覚が生まれていきました。

—— クラブでのつながりが、仕事につながったと感じる場面はありますか?

山口:
「会社でも『流山出身の人がいる』みたいな話になったりします。
仕事で関わる人が流山出身だったりすると、自分も同席して話をしたり。
そういうつながりができるのは面白いですね。」

サッカー、地域、仕事。
それぞれ別のものに見えていたものが、5年間の中で少しずつつながり始めています。

「やるなら、やりきろう」

社会人として働き始めれば、仕事が忙しくなる。
結婚や家庭など、人生の環境も変わっていきます。
サッカーを続けるか、辞めるか。
山口選手自身も、これまで何度か考えてきました。

山口:
「辞めるか、辞めないかみたいなのは考えますよ。
でも、やっぱ続けるって決めたら、『やりきろう』って思います。」

怪我もあります。
身体の状態が良くないと感じることもあります。
「何歳まで」と明確に線を引いているわけではありません。

—— 山口選手は、この先、どこまでサッカーを続けると思いますか?

山口:
「どこまでやるかって、難しいですね。
線引きっていうのが。
怪我もあって、明らかに身体の状態が良くないなと感じるところはありますけど。」

それでも、続けています。
その理由を聞くと、最後に返ってきたのはとてもシンプルな言葉でした。

「結局、自分はサッカーが楽しいから続けてる」

これから社会人になり、サッカーを続けるか悩んでいる選手へ、山口選手は事前アンケートでこんな言葉を書いていました。

「どんな決断をしても、これまで積み重ねてきたことは絶対に消えません。自分の心がワクワクする方に、自信を持って進んでください。」

—— 山口選手自身も、「ワクワクする方」を選んできたという感覚がありますか?

山口:
「そうですね。
自分もサッカーをやりたくて、サッカーをやるためにいろいろ選択してきたと思うので。」

社会人になれば、「仕事のためにサッカーを辞めなければいけない」と考えることもあります。
将来の生活を考えれば、競技を続けることに迷うのは当然です。
それでも、山口選手が大切にしてほしいと話すのは、「楽しい」「やりたい」という自分自身の気持ちです。

山口:
「何より、その楽しさみたいなところを大事にしてほしいなと思います。
結局、自分はサッカーが楽しいから続けてるんで。
難しいですね。うまく言葉にできないですけど(笑)。」

大学卒業時、山口選手は仕事について「やりたいことが分からない」と話していました。
それでも、「サッカーを続けたい」という気持ちはありました。
その気持ちを起点にクラブを選び、仕事を選び直し、5年間を歩んできました。

仕事とサッカーを両立できるか分からなかった選手が、今では仕事でも新しい経験を重ね、地域の人たちとつながり、応援してくれる人と勝つ喜びを分かち合いたいと思うようになっています。

最初から、人生の答えが決まっていたわけではありません。
仕事の正解も、サッカーをいつまで続けるのかも、今なお分かりません。
それでも、「ワクワクする方」を選びながら進んできた。

山口賢人選手の5年間は、これから社会人サッカーを続けるか迷っている選手に、そんな生き方もあることを伝えてくれます。

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